【マーナの考え方】ものづくりを支える「らしさ」と改良の文化

2026.9.11

創業150年を越え、キッチン、バス、そうじ、トラベルなど、様々なカテゴリーで数多くの生活雑貨を開発しているマーナ。新コンテンツ『マーナの考え方』では、企業としての考え方や価値観、ものづくりに対する姿勢を様々な切り口でご紹介します。今回は、そんなマーナが自らの「らしさ」として定義している3つの考え方と、それらがものづくりにどのように活きているのか。またその中で、会社の文化として定着している「改良」について話を聞きました。

【開発部マネージャー】谷口

マーナらしさ「優しく、誠実に、よりよく」

―マーナが自分たちのらしさと定義している、3つの考え方について教えていただけますか?

私たちらしさってなんだろう?と考えたことがきっかけだったと思います。元々社訓として言葉になっていたものだったのですが、その中から特に自分たちに浸透しているもので、よりマーナらしいと感じられる要素にしぼり、改めて言葉にまとめました。

優しくあることを大前提に、いつも誠実でいることを心がけ、一歩一歩、着実によりよくしていく。自分たちのすべての行動の土台となる考え方として、大切にしています。

暮らしをよりよくする、ものづくりと考え方

―すべての行動にとありましたが、マーナのものづくりにおいて、3つの考え方はどのように活きているのでしょう?

生活雑貨を作るということは、暮らしと密接なものを作るということになります。お客様の暮らしを今よりよくしていこうと思うと、必然的に、その人に寄り添った優しいものを作ったり、姿勢も製品自体も誠実なものづくりに繋がると思っています。

とくに「よりよく」は、マーナのアイデンティティと言えるかもしれません。時代の変化に合わせて改善していくという姿勢は、創業時から深く根付いている考え方です。改善していくのは、物事の捉え方や常識はもちろん、製品も同様です。私たちは、製品を改善していくことを「改良」と言っています。

お客様の暮らしが少しでもよく変わるならば、発売後の製品であっても、改良を続けていかなければなと。まだよくできる余地があると向上心を持って向き合う風土が、ものづくりに現れていると思います。

マーナの文化、改良とは

―「よりよく」という考え方からくる改良ですが、発売後も継続して改良していくのは、なぜでしょうか。

きっと「人のために何かをしたい」という思いが、ずっとあるのだと思います。作り手としては、完璧だと思えるところまで突き詰めてから発売を迎えます。でもそれは、自分たちの中での完璧で。

発売後、たくさんの方に使ってもらうことで、改善すべき点が見えてくるというのが、どの製品にもあります。「よりよくできるかもしれない」と気がついた時点で、もっとお客様に喜んでもらえるようにと、改良が始まりますね。

―開発当初から市場調査やモニター調査を重ねられているとは思いますが、それでも発売後にはじめて分かることもありますか?

そうですね。私たちが想像していなかった使い方があったり、想像以上に、長期間にわたって愛用していただけて、日々の使用で消耗してくると、想定外のことが起こることがあります。そうした声を真摯に受け止めて、修正や調整をしています。

また、人の暮らしも少しずつ変わっていくので、その移り変わりに合わせてアップデートをすることもありますね。

改良のはじまりは、声を聞くこと

―発売後、改良はどのようにはじまるのでしょうか。きっかけなどはありますか?

改良のきっかけは大きく2つあります。一つ目は、担当デザイナーがお客様の口コミを見てその問題点に気が付いた時。二つ目は、デザイナー自身が使っていて、ここを改良したら、さらに良くなるのではないかと感じた時です。

―担当デザイナーの方は、いくつかの製品を同時に開発している中で、発売後の製品の動向も観察しているということでしょうか。

はい。担当デザイナーだけではなく、社内のみんなが製品をよりよくしたいというマインドなので、様々な方から部署を越えてアドバイスいただいてます。デザイナーではないメンバーほど、生活者目線でフラットな意見が出てくるんです。

新商品のサンプルを見せて「これどうですか?」と意見を求めたときに、「私は、いりません!」とはっきり言われたこともありました(笑)。一度いいと思ったものでも、違う視点からの意見を受け止めて検討する。そんな、柔軟性を求められています。

―とても貴重ですね!気軽に意見を伝え合える環境が、改良の文化を支えていそうです。

そうですね。「発売後に使ってみたけど、こうだったよ」とフィードバックしてくれるからこその改良の多さというか。正直に評価してくれるからこそよりよくできるので、相乗効果になっています。商品が増えれば増えるほど担当デザイナーだけでは時間が足りなくなってくるので、そういった社員みんなでの動向観察はとてもいい取り組みになっています。

実は改良していた、あの製品

●調味料ポット

―実際の改良品のお話を聞かせてください。調味料ポットは発売後に何度も改良を重ねてこられたそうですね。

調味料ポットをはじめて改良した理由は、「フタが閉まらなくなってしまった」というお声をいただいたことからでした。開発当初、塩と砂糖だけを入れる想定で作っていたのですが、小麦粉を入れる方もいらっしゃって、そうなるとパッキンに小麦粉がついてしまい、フタがしっかり閉まらなくなるという不具合が出てしまいました。

なので、初代はパッキンのみでフタを閉めていたのを、小さな突起をつけることで、物理的にフタと本体が固定されるような構造に変更しました。小麦粉対策です。

―こんなに小さな突起がついていたのですね…!

小麦粉の他にも、様々なものを入れる方がいるので、識別シールも発売後間もなくして付属しました。見分けがつけられるようにして欲しい、というお声もたくさんいただいたので。

擦り切り板も、ワイドサイズが発売になったタイミングでより薄く変更しました。パーツもなるべくシンプルにした方が、お手入れもしやすいし、見た目もすっきりして気持ちがいいなと。

―軽微な改良を重ねられたのですね。改良したことは、お客様にはお伝えするのですか?

軽微な改良であればお伝えしませんが、大きく形の変わる改良のときは、アップデートしましたとお伝えしていますね。

●スリムに自立するほうき ちりとり

―ほうき ちりとりも最近改良されましたね。公式サイトで拝見しました!長さが変わったのでしょうか?

そうなんです。いただいた口コミの中で一番多かったのが、「かがむのが辛い」「腰に負担がかかる」というお声でした。使う場所として想定していた玄関は、ものが多く狭くなりがちなので、スリムに立たせて収納できることと、存在感をおさえることに注力して限界まで小さくしていました。評価いただける特長でもありましたが、掃きやすさを考慮して、今回改良することになりました。

―今回の柄の長さは、どのように決めましたか?

数ミリごとに長さが違う試作品を何本も作って、どれが違和感がないか検証しました。大幅に長くすると、短いままでも使いやすいと感じる方、少し長くするだけで快適になる方にとって、大きな違和感になってしまうなと。なので、誰が手に取っても違和感なく使える長さはどれだろうと、最大公約数で選びました。

―その他の改良点はありますか?

そうですね。ここからは軽微な改良ですが、持ち手の角を少しだけ丸くして握り心地をよくしたり、ちりとりには帯電防止剤を入れて、ゴミを捨てる時に残りにくくしました。日々の使いやすさに繋がる、細かな調整ですね。

●ワンタッチで開くシートケース

―細かな調整というと、シートケースもそうでしょうか。

元々はボタンで開く仕様だったのを、ラッチというパーツを付けることでフタを押しただけでカチッと開く仕様に変更しました。開け心地が軽やかになって、大変ご好評いただけました。ただ、その後に「どこを押したらいいのか分からなくなる」というお声をいただいて。これがきっかけで、フタの天面に凹みをつける改良をしました。

見た目だけではなく、手で触れた時にも認識できるように、人間工学に詳しい設計メンバーと一緒に、指先で認識できつつ、押し心地がいい凹みを突き詰めました。実はこのタイミングでパッキンも改良したので、密閉性も向上させています。

―Sサイズが発売になったのは、お客様の声がきっかけということでしょうか。

はい。Mサイズはお尻拭きシートも入るのですが、市販のウェットシートや除菌シートは、もっと小さくて浅い。そんなコンパクトなシートがぴったり入るミニマムサイズがあったら喜んでいただけるのでは?ということで、Sサイズを作りました。

―改良品と同じフローで、新商品が開発されることもあるのですね!

そうですね。製品を発売したらサイズ違いや色違いなど、その派生のご要望もいただきますね。

●立つしゃもじ

―発売から何年も経ったロングセラー商品を改良することもあるのでしょうか?

もちろんあります。「立つしゃもじ」はロングセラーの製品で昔からご愛用いただいている方も多かったため、ガラッと変えるようなことはせずに、軽微な調整でよりよくしていくという、積み重ねの改良でした。

本当に、隣に並べないと分からないほどの微調整で、すくう部分をほんの少しだけ長くしたり、柄の手当たりをよくして握りやすくしたり。しゃもじはやっぱり混ぜやすいことが重要で、それがお米をおいしく食べられることにも繋がるんです。またエンボスの高さを0.2ミリ高くして、よりお米がつきにくい形を目指しています。元々あった個性を、1つずつ丁寧にのばす改良です。

どんな製品にもある「余白」

―「よりよい製品」に、完成はあるのでしょうか。

もちろん、そうでありたいですし、毎回ベストだと言える製品を作っています。ただ、本質として、どんな製品でも95%くらいの完成度で、残りの5%に「よりよくできる余白」のある状態なのではないかとも思っています。「これ以上のいいものはできません」というのは、ちょっと違うのかなと。

―余白があるのは、どうしてなのでしょう?

正直、まったく手を加える余地のない、完璧なものというのは存在しないと思っています。技術の変化であったり、時代の変化であったり、人の価値観もそうですが、あらゆるものが変化していく中で“完璧”もきっと姿を変えていくのだろうと。
ですがそこで諦めるのではなく、常に向上心を持って、その中で一番いい回答(製品)を目指すことが、私たちの使命だと思っています。

今回の「立つしゃもじ」も発売から20年ほど経ちましたが、よりよくできる点が出てくるんです。それが先ほどの、残り5%なのかなと。改善に終わりはありませんね。

改良とは、お客様を思い続けること

―マーナにとって、改良とは?

私たちにとっての改良は、「お客様にもっと喜んでいただきたい」というまっすぐな思いと、向上心、そして挑戦が現れたものですね。最初にお話しした、マーナらしさのはじめにある「優しさ」は、ものづくりにおいては、どれだけの時間、深く長くお客様のことを考えているかだと思っています。知った気にならないように、ちゃんと知ろうとする。考えるって、愛なのかもしれません。ほんとうにずっと考えていますからね(笑)。

その上で、誠実なものづくりをして、お客様にとってのベストなものを常に提供し続けていく。マーナ社員全員がそう思いながら、日々仕事に取り組んでいます。

写真:七緒