商品開発の裏話をお届けするこのコーナー。今回は、おやすみ前の絵本の読み聞かせ時間をあたたかく演出する「えほんライト」をご紹介いたします。
−−− 「えほんライト」開発のきっかけを教えてください。
実は外部デザイナーからの提案なんです。お気に入りのぬいぐるみにライトを持たせることで、単なる読み聞かせがかけがえのない時間になるんだよと言って、最初はぬいぐるみに懐中電灯型ライトを持たせるアイデア提案でした(笑)。そのアイデアに共感し、私たちマーナで具体的なデザインと商品化を行いました。
−−− 開発にあたってどんな調査をされましたか?
まずは子育て中の方に、寝る前の読み聞かせをどんなふうにしているのか聞いてみました。すると、「明るい部屋で読み聞かせて、眠くなってきたら暗い部屋へ移動する」「スマホのライトを使っている」といった意外な声が上がりました。また、寝る前の絵本の読み聞かせが子どもにとってよいものなのか、どれくらいの明るさで読み聞かせるのがよいのか、あらゆる視点から調査をしました。
−−− 絵本の読み聞かせに特化した照明は、珍しいですよね。
授乳ランプやベッドサイドランプは販売されていますが、絵本の読み聞かせに特化した照明はほとんどありません。
「えほんライト」はお気に入りのぬいぐるみに取りつける仕様でアナログなつくりですが、その分、親子のあたたかなコミュニケーションをつくることができるはずだ、と考えました。
−−− 開発までにどれくらいの時間がかかりましたか?
開発をスタートしてから完成まで、約3年半かかりました。社内で家電製品の開発実績がほとんどなかったので、情報収集や設計、そして安全性の担保にも十分な時間をかけました。
−−− デザインや機能の中でも、特につくりこんだ部分はどこですか?
一番はベルト部分です。社内でいろんなサイズのぬいぐるみを持ち寄ってもらい、試作を重ねました。
最終的には、ぬいぐるみとライトがすべりにくいよう太い平紐にし、先端の厚さをほんの少し厚くすることでベルト調整の穴に入れやすく、外れにくくなるように調整しました。
−−− ライト本体が星型なのは、何か理由があるんでしょうか?
子どもが光るものといえば何を思いつくだろう?と考えて「星」を選びました。絵本や童謡にもよく登場するモチーフですし、身近な存在なので「えほんライト」にぴったりかな?と思っています。
−−− 星型にしたことで、設計面でこだわった点はありましたか?
星型が均等に光るよう、調整するのが大変でした。中央がふくらんだドーム型にすることで、解決しています。また、ライトの側面は光が子どもの顔に当たるので、少し暗めになるよう内部のプラスチックの厚みを変えました。
−−− ライトの裏面はどのようになっていますか?
ライトの裏面も、見た目の美しさと操作性の観点から細かいところにこだわっています。最初は、電池蓋が中央にあり、さらに星型の5つの先端部分にねじ止めがあったので、無骨な印象だったんです。電源ボタンの位置も上部に配置していたので、ぬいぐるみに付けた後に電源のON/OFFが難しかったのも、悩ましい点でした。
最終的に、裏面全体を電池蓋にして、5つあったねじ止めを1つに減らしました。星型の電池蓋をカチッときれいにはめられるようにしたので、すっきりとした印象になったと思います。電源ボタンも、下部に配置して押しやすくなりました。
−−− パッケージのデザインも、絵本のようでとってもかわいいですね!
ギフトとして喜ばれる商品を目指したので、まずは第一印象で「かわいい!」と思って手に取ってもらえるもの、パパ・ママへのギフトとして選びたくなるパッケージを目指しました。
箱型にすることは早く決まったんですが、パッケージの段階から商品が見えた方がよいのか、あるいは見えない方がよいのかで迷いました。初期の試作では、透明なパッケージデザインと、あえて中身が見えない絵本型のパッケージの2つの方向で進めました。
2つの試作を進めて、どちらの方向性がよいか、他のデザイナーたちに意見を聞いたとき「開けた瞬間に世界が広がる感じがいいね」と、みんな絵本型を推してくれたんです。
−−− 絵本型のパッケージは、これまでのマーナの商品にないデザインですよね。
そうですね。寝る前の絵本を読み聞かせる、親子の幸せな時間。商品に込められたストーリーを、パッケージにもぎゅっと詰め込みたかったんです。
−−− パッケージが、スリーブと箱に分かれているのは何か理由が?
スリーブから絵本型の中箱を取り出して、そっと開くと、夜の世界が始まる。そんなワクワク感を表現したくて、このような構造を選びました。
−−− パッケージのイラストや中箱の工夫についても教えてください。
ギフトとして大人が選ぶものなので、かわいさやぬくもり感は残しつつ、子どもっぽくなりすぎないように注意しました。イラストでいうと、例えば、水彩画風のぼかしを取り入れたり、紙や布のような素材感を取り入れたりしています。
−−− 完成した「えほんライト」社内からはどんな声が上がりましたか?
社員の子どもたちに見せてみると、みんな第一声からとても喜んでくれました。「お星様だ!」とニコニコしてくれたり「きらきら星」を歌ってくれたり。子どものほうから絵本とライトを持ってきて「これを読んで!」と言ってくれる子もいて、私たちもとてもうれしくなりました。
小学校高学年くらいの子どもの中には「えほんライトを付けたら、お気に入りのぬいぐるみが、もっとかわいくなった!」とぬいぐるみの装飾として気に入ってくれる子もいましたね。
−−− どんな方に「えほんライト」を使ってもらいたいですか?
毎日の仕事や家事でバタバタする中、子どもとゆったりと過ごせる時間が、おやすみ前のひとときだと思うんです。なので子どもとの時間を大切にしたい人に、手にとってもらいたいです。
パパ・ママは、子どもが生まれてから小学生になるくらいまで、絵本の読み聞かせをすると思います。「えほんライト」を通じて親子の思い出ができて、やがてその子が大人になったとき、自分が体験したような時間を子どもと過ごしたいと思う……そんなふうにして、親子のあたたかなコミュニケーションの継承につながれば、とてもうれしいです。