2025.10.17
「腰をかがめずに立ったまま使いたい」「部屋に置いても違和感のないものがほしい」。そんな声から生まれたのが、マーナの「スタンドほうきちりとり」です。シンプルで凛とした佇まいと、気づいたときにすぐ手に取れる気軽さ。暮らしに寄り添う新しい定番を目指しました。
【スタンドほうきちりとり プロダクト担当】山田
―「スタンドほうきちりとり」を開発することになったきっかけを教えてください。
マーナにはすでに人気製品の「ほうき ちりとり」があります。スリムさやコンパクトさに高い評価をいただく中、「立ったままでも楽に掃けるものがほしい」という声もありました。既存品の良さはそのままに、リビングやキッチンでもより快適に使える新しい立ち位置のほうきちりとりを作ろうと思ったのが始まりです。
―「ほうき ちりとり」との違いはどんなところにありますか。
既存品は毛先がしっかりしていて、ベランダや玄関先に最適な仕様です。新しいスタンドほうきちりとりは、室内でも使いやすいような佇まいと掃きやすさを両立させました。
―掃除機との使い分けについてはどう考えていますか。
最近は静音の掃除機も増えていますが、やっぱり夜は音が気になります。私も以前は掃除機がメインでしたが、観葉植物の土やパンくずのような細かいゴミは、掃除機を出すまでもなかったり、逆に吸いにくかったり。そんなとき、ほうきならすぐに取り出してサッと掃けるのが魅力です。
平日は夜にほうきをメインに、週末は掃除機でしっかりと。自然とそんな併用スタイルになっています。「掃除したい」と思ったときにすぐ使えること。それが今回の開発で大切にしたポイントです。
(正面から見ても横から見ても、美しい立ち姿)
(ピタッと重なる設計で、見た目と使い心地を両立)
―いちばんのこだわりはどんな点でしょうか?
ちりとりの柄にほうきのフックを置くだけで、ピタッとはまって安定するところです。「すぐに手に取れる」ことがこの製品の魅力。だからこそ取り外しやすさは譲れませんでした。
同時に空間になじむことも大切。フックや留め具で固定すると安心感はありますが、存在感が出てしまいます。そこで置くだけでしっかり安定し、かつ気を遣わずにさっと戻せる仕組みにしました。
(こだわり抜いた持ち手の試作は数えきれないほど)
―思い描いた通りに仕上げるのに、時間がかかったのでは?
とても難しかったです。手に取りやすさと戻したときの安定感、見た目のバランス。その絶妙な塩梅を探るために、何度も試作を繰り返しました。ペアで開発を進めている設計担当や同じ部署のメンバーにもアイデアを出してもらいながら、3Dプリンターでサンプルを作っては、粘土で微調整して、またプリントして。サンプルが増えすぎて、自分でもどれがどれだかわからなくなるくらいでした。
(試行錯誤を重ねた持ち手部分のスケッチ)
―実際には、どんな工夫をされたのですか?
ほうきとちりとりを重ねる凹凸部分は、丸形ではめると安定せず回ってしまうので、ほんの少し角を持たせた楕円形にしました。そうすることでピタッと安定し、自然にすっと収まります。
固定されすぎても外しづらいし、緩いと外れてしまう。「はめるのに力がいる」「コツがいる」となると使う頻度が減ってしまうので、そのバランスに心を砕きました。
(最終的に、角を持たせた楕円形の凹凸に)
(狭い隙間にもするりと入る、スリムなヘッド)
―ヘッド部分も既存のものよりスリムですね。
大きなヘッドの掃除機では難しいところにも手が届く、そんなサイズ感を目指しました。高さは約8cm、厚みも薄くして、ソファ下やベッド下はもちろん冷蔵庫と壁の間などの狭い隙間にも入ります。
さらに、ヘッドは可動式にしました。小学校にあった「自在ほうき」を参考に、左右180度に動く仕様です。ぐらぐら動きすぎると安定せず掃きづらいので、動きに強弱をつけて動作性と安定性のちょうどよいバランスを探りました。
―毛先の仕様はどのように決めたのでしょう。
既存品と同じ素材ですが、毛の直径を細くして柔らかさを出しました。柔らかい毛は床に沿ってしなやかに動き、ほこりを「掃く」というより「集める」ような感覚。
さらにブラシの長さも短めにして、掃き心地と隙間への入りやすさを両立しました。室内では柔らかい方が断然使いやすいと感じています。
(毛量も調整し、しなやかで確かな掃き心地に)
(床面にやさしく沿い、“集める”感覚を実現)
―製品が完成してどんな気持ちでしたか?
とにかく微調整の連続でしたが、最終的に「取り出したり戻したりする動作が、スマートでスタイリッシュ」と評価してもらえた時は、心からほっとしました。
―こだわりと想いを込めた「スタンドほうきちりとり」をどんな方に使ってほしいですか?
掃除機と併用しながら、好きなタイミングで気軽に掃除したい方におすすめです。ちょっとした汚れに気づいたらサッと使えて、部屋のきれいが自然と続きます。
また「手に取りたくなる」感覚を大切にしたくて、扱いやすい重さにしました。軽すぎるとチープに感じるし、重すぎると扱いづらい。ちょうどいいバランスで、非家電ならではの“自分で掃く心地よさ”を味わえます。日々を快適にしてくれる道具として、使う人の暮らしに寄り添ってくれたらうれしいです。
写真:井手 勇貴
文:高野 瞳