2025.6.6
第11回は絵描き・イラストレーターの三嶋さつきさんが登場。「暮らしの喜びから作品が生まれる」と話す彼女が、日々愛用するマーナアイテムとは?
春の風が台所へと通り抜け、縁側から見上げた先には山々の稜線。イラストレーター・絵描きである三嶋さつきさんのアトリエは、鎌倉の中心地から少し離れた古い一軒家にあります。
日常の景色を主に赤やピンク色で描く三嶋さん。チューリップの花束、海辺のお散歩、ごほうびビールで乾杯。誰しも身に覚えのある愛しい情景は、多くの人の心に共鳴し、惹きつけています。
「暮らしと表現がつながっていて、その時の気持ちが作品に現れるタイプです。昔から特に心動かされるのは季節のこと。たとえば冬から春に変わる一瞬の空気のまどろみにときめいたり、新緑の頃は自然と緑色の絵が増えることも」
暮らしの根っこである家は、古道具屋や祖父母から譲り受けたものを活かしながら、ところどころに作品を散りばめて。かたわらに寄り添う愛犬の森さん。ゆるやかな時の流れに、どこまでもくつろいでしまいます。
「でも東京で働いていた頃、暮らしに目を向ける余裕はありませんでした」と意外な一言。大学卒業後、テレビ局へ就職。当時は夜遅くまで働くのが日常で、家にはタクシーで寝に帰るだけという日もあったのだそう。
祖父母の代から農業を営み、季節のリズムで働き暮らす家庭で育った三嶋さん。故郷・和歌山のように自然を感じながら描きたい。思いと重なるようにコロナ禍となり、思い切って鎌倉へ。そして独立。
「鎌倉で等身大の暮らしを楽しむ人にたくさん出会い『私らしくいられる暮らしをする』と決めました。暮らしと表現が地続きだからこそ、心地よさに敏感になろうって。犬と住みはじめたり、縁側でのんびりしたり。ささやかですが喜びに満ちた日々です」
「片手で蓋を開けて取り出せるから、もう一方の手で犬を抱っこしながら足を拭いたり、座ったままちょっとテーブル拭きたい時にぴったり。しかも底の吸盤でしっかり固定されるから倒れにくい。デザインも美しい」
家事の小さな心地よさに目を向けるさまは、季節の喜びをまなざしながら、キャンバスへ向かう姿と重なります。
「マーナは商品一つひとつに思いやりを感じます。私たちが面倒に感じる部分をデザインで解決してくれるものばかり。それゆえずっと使っていられるし、ずっと使っていたい。だから気づいたら増えていたんでしょうね(笑)」
地に足の着いた暮らしを慈しみ、喜びはキャンバスに乗って誰かの暮らしを彩っていく。それがきっと今の三嶋さんらしさ。そのあちこちに今日もマーナはひっそり寄り添っています。
写真と文:七緒