2024.12.6
第9回はスープ作家の有賀薫さんが登場。ままならない日々を救うスープ料理、モノ選びの視点、そして愛用しているマーナ商品について伺いました。
くつくつ煮込む音に、漂ういい香り。ふたを取った瞬間の湯気、ひとさじごとにゆるむ頬。家庭料理のあたたかさをレシピと共に届けているのが、スープ作家の有賀薫さんです。
たとえば疲れ果てた平日の夜。さあどうしよう、作る気力なんてない…そんな日も有賀さんのレシピがあれば大丈夫。家にあるものでちゃちゃっと作れて、体はあたたまり「やった、ちゃんと作れた」と自己肯定まで叶います。
「スープは心に作用する料理ですから」
おだやかに口を開く有賀さんはレシピ開発、著書出版、コラム執筆にスープ旅。活躍の幅をのびやかに広げています。
スープ作家としてのデビューは意外にも50代に入ってから。20年以上、生活者として料理を作り続けてきたから、レシピはなるべくシンプルに。そして消耗ではなく、心身ともに満ちていくものを。
「料理が億劫に感じる気持ち、本当によくわかるんです。私自身、ライター業と育児を両立しながら、ごはんを作ってきました。『今日の夕飯、何にしよう』なんて日も多々あって、料理のしんどさは自分ごと。とはいえコンビニ弁当で済ませるのも味気ない」
(パパっと完成「鶏ときのこのスープ」)
「その点、スープは簡単で失敗の少ない料理ですから、忙しくても作れます。冷蔵庫のすみに転がっている野菜の切れはしや、うまみが出るハムなんかを鍋に入れて、コトコト煮込んで塩で味つけすれば完成」
私たちは知っている。しんどくても、いざ作ってみると料理は自身を癒やしていくものだということを。ごはんをこしらえ、おいしさを分かち合う。それは人に宿る根源的な喜びかもしれません。
「よく人が遊びに来る実家でした。母が湯豆腐とかを作って、みんなで食卓を囲む。そのあたたかな記憶が原体験にあります。人ってスープという言葉だけでほわ〜っとゆるむんです(笑)。だからスープの力を借りて、くつろぎや安らぎ…食にまつわるあたたかなものを届けたい」
有賀さんが日用品を選ぶとき、大事にしている視点。それは体へのフィット感。時にデザイン重視で選ぶこともありますが、合わないと使用頻度が減っていく。自然と手に取ってしまうものを、愛用の軸としています。
「毎日使うものだから、小さなストレスがないだけで生活が楽になる。体や使い心地は人それぞれ。だから合うものを選ぶことが一番。その見極めは、実際に手に取ってたくさん使うことかな。『合う・合わない』って体の感覚だから」
「清潔なふきんって心地よいですよね。そのためのルーティンがあって。使い終えたふきんをバケツにぽんぽん入れて、ある程度溜まったら、漂白して一晩浸け置き。翌朝すすいで、洗濯機で脱水して干すと、白を保てます」
「今まで適当なタッパーで代用してましたが、どうも見た目が良くないともやもや。マーナのバケツはシンプルな佇まいで、持ち運びもしやすい。スクエア型で洗い場にもフィット。出会えて良かったと思っています」
日常にひそむしんどさにふたをせず「じゃあどうすれば心地よい?」と今に目を向け、自らの歩幅で整えていけたら。ままならぬ日常はあたたかなもので満ちていく。一杯のスープ、身近な日用品から変えていけばいい、と励まされました。
写真と文:七緒