2023.11.29
第4回はイラストレーターの秋山花さんが登場。日常の情景を描いている秋山さんに、暮らし観やマーナ商品の使いこなしを伺いました。
静かな森、雪の降る月夜、あたたかなスープ。さまざまな暮らしのワンシーンを描くイラストレーターの秋山花さん。独特な質感と不思議な世界観ではっと惹きつけられる作品の数々は、雑誌『暮しの手帖』や無印良品などのライフスタイルブランドでも多く起用されています。
幼い頃からアートにふれる機会が多かった秋山さん。絵を描きはじめたのはイラストレーターのご両親の影響でした。
「父も母もイラストレーターで、それこそ幼稚園の頃から、週末は美術館に連れ回されていました。はじめから絵が好きだったわけじゃないんです。静かにしていないといけないし、窮屈だなあと思う時もありました」
幼心に変化の兆しが見えたのは、小学校高学年。メッセージ性を秘めた画家・ブリューゲルの作品にふれた瞬間『絵って面白いかも?』と。加えて当時行く機会が多くあった海外での経験が、シャイだった秋山さんの心を動かしていきます。
「言葉が伝わらなくても、紙とペンさえあればコミュニケーションが取れるんだ!って実感したんです。レストランで父がさっと魚の絵を描いたらオーダーが通ったり、外国の子と隣りあった時、絵を描いて仲良くなったり。絵の力に惹かれていきましたね」
(絵の具と鉛筆で描く。「制作はアナログです」)
今春、マーナからの依頼でハンカチ用イラスト「おさかなスポンジのある暮らし」を制作。
「あれは、私の暮らしのワンシーンです。おさかなスポンジを台所に置いた朝、うちの犬がスポンジに気づいてワンワン吠えて。「あれは何だ!」って。存在感があったんでしょうね(笑)その光景が愛しくて、イラストで表現しました」
(犬がスポンジに気づいた瞬間を“丸”を浮かべて表現)
誰かがいた記憶や、時の流れまで描く。だから秋山さんの絵にふれると、受け手それぞれに物語が立ち上がっていくのかもしれません。
「実はテーマに合わせてストレートに描く気はないんです。ちょっと不思議で『あれ?何だろう?』という表現を入れたい。毒にも薬にもならないし、白でも黒でもないけれど、豊かな存在になれたらと描いています」
「本当に静かで、この場所は制作にぴったりです」
生前、お父さまが使っていたアトリエが、今は秋山さんのクリエイションの場。日々の制作に寄り添うマーナ商品は?
実は7歳のお子さんを育てる母でもある秋山さん。毎日は「お世話を中心に回っています」とほほえみます。だからこそ一人静かに集中するアトリエ時間は、何にも代えがたいスペシャルなもの。
心地よくなじむデザイン、それでいて機能的。生活だけでなく、制作に邁進するその時間にも、マーナの商品はやさしく寄り添ってくれる。あらたな魅力に光をあててもらえた、そんな昼下がりでした。
写真と文:七緒