マーナのドリンクウェアシリーズ「cocuri」の第1弾として誕生した「Everywhereマグ」。“口当たりがよく、飲みものがおいしく感じられる”と好評です。おいしい時間を生む背景を紐解きます。
【Everywhereマグ プロダクト担当】岩崎(写真右)・東原(写真左)
▼目次
1.飲みものを“味わう”暮らしのワンシーンに寄り添う
2.安心して味に集中できる飲み口と、使いやすさの工夫
3.ほっと一息。やさしい時間を生む、見た目と手触りと音
4.お気に入りのマグカップを持ち歩くような感覚で
飲みものを“味わう”暮らしのワンシーンに寄り添う
(200mLロータスグリーン、500mLカームホワイト、350mLフォグブルー)
─そもそもどうしてマグボトルをつくろうと思ったのでしょう?
東原:マーナとして、暮らしの中で「飲みものを飲む」ことをサポートしたいと思ったのがはじまりです。飲みものを飲むことは「ほっと一息つきたい」「リラックスしたい」など心に作用するものだと思うんです。そしてそれは、家の中だけでなく、お出かけ先だったり、職場だったりしますよね。いつどこでも、「飲みものを飲む」ことのいちばん身近にいられるのはマグボトルだろうと、開発をスタートしました。
─マグボトルをつくることありきではなく、「飲みものを飲む」という暮らしのシーンに寄り添うことが出発点だったんですね。
岩崎:はい。そこから、飲みものを飲むときにはやっぱり「おいしく味わいたいよね」という願いに自然と行き着いたんです。
東原:すでにあるマグボトルは、出先での水分補給を目的に軽さや大きさ、保温性などのスペックが重視されていて、“おいしさ”をあきらめているものが多い気がするんです。だから私たちは“おいしく味わう”ことを追求することにしました。
岩崎:飲みものをおいしく味わうってどういうことだろう?とアイデアを出し合う中で、自分たちが普段自宅でよく使っているマグカップを持ち寄ったんです。
東原:最初は、味わいがまろやかになるスズを使うアイデアもあったんですが、もっとシンプルに、お気に入りのマグカップを持ち歩けるような感覚のマグボトルをつくろうと。そこからは飲み心地にこだわった素材と形状を突き詰めていきました。
安心して味に集中できる飲み口と、使いやすさの工夫
─飲み心地にこだわった素材と形状とは具体的にどんなものですか?
岩崎:素材は、ステンレス特有の金属臭がしないように、飲みものを入れる内側から唇に触れる飲み口までをすべてセラミックでコーティングしています。
東原:飲み口の形状は、香りが立つように広口にしていまして。実は開発から1年半かけて完成した第1号はもっと広かったんです。でも、試作品でモニターをしたら、開けたときに中身がこぼれやすいことがわかった。水筒としての不便さがあっては、暮らしに寄り添うことができないので、さらに1年かけて改良しました。
岩崎:広さに加えて、厚みや角度にもこだわりました。口当たりがよいマグカップを参考に、厚すぎず薄すぎず、先端に向かって傾斜があるといいよねと。艶やかな表面で口当たりに違和感がなく、動作がスムーズでこぼれる心配がなく、気を遣わず味に集中できるように設計しました。
東原:冷たいものをごくごく飲みたいときと、熱いものをちびちび飲みたいとき、どちらも安心して飲めることも考慮しています。
(飲み口の参考にした、岩崎のお気に入りのマグカップ)
─細部にまでこだわった飲み口が“おいしさ”をつくっているのですね。日々使うことを考えて、機能面で工夫したことはありますか?
東原:使い続けていただくために、洗いやすさも重視しました。最小限の3つのパーツでお手入れが楽にできるように。パッキンの溝が狭くて深いと洗いにくいことがわかったので、素材や形状の試作も何度も行いました。
(ボディとフタとパッキンのみのシンプルな構造)
岩崎:あとは、ボディの底の内側が直角だと水垢が溜まってしまうのでR型にしています。さらに、ツルツルしたセラミック加工は、汚れが溜まりにくく水切れもいいので、清潔さを保てるんです。
東原:使いやすさとしては、ひとひねりで開閉できて、キュッと音がしない。かつ閉じているときにもれず、開けた時の液だれが少ないフタの構造も試行錯誤を重ねました。
ほっと一息。やさしい時間を生む、見た目と手触りと音
─ころんとした見た目もかわいいです。デザインのこだわりについても教えてください。
東原:五感で味わってほしいという思いをベースに、視覚的にもほっと一息つけるように、あたたかみのあるデザインを意識しました。持ったときに手に馴染むように、底は丸みを持たせています。
岩崎:天面は2mmだけ凹ませているんです。表面張力で水が膨らむことから着想を得て、カーブをつけることで自然物に近いかたちにしようと。
(天面の試作品。真ん中が2mmの凹み幅があるもの、右下が真っ直ぐなもの)
東原:それから、置いたときにコツンという音がしないように、底面には衝撃を吸収するラバークッションを施しています。置く度に音がすると、リラックスできるやさしい時間が途切れてしまうと思ったので。
(底面にラバークッションがあることで音が鳴らない)
岩崎:触覚的にも、ボディの表面に素焼きの陶器に近い手触りのパウダーコーティングを施しています。
─Everywhereマグを使うときに五感がひらく感覚がするのは、味や香りだけでなく、見た目、音、手触りまでこだわり抜いているからなんですね。やさしい雰囲気のカラーバリエーションにもときめきました。
東原:一息つくのにふさわしい色として、岩や花など自然から着想を得て、穏やかな色味を検討しました。
岩崎:社内で自分たちで色を混ぜ合わせて、もう少し白を足そう、青みを入れようと、調合し乾かして20色をつくり、その中から選んだ12色を工場で試作して、 決めました。
東原:ファッションを意識して、白と黒をベースに、200mLにはピンクとグリーンを、350mLにはブルーを加えています。
(サイズごとに楽しめるカラーバリエーション)
東原:パッケージにもこだわっていまして、単体では香りが立ち上るイメージを、複数個つなげると感情がほどけていくイメージを表現しています。
(並べると線がつながり広がりのある絵になる)
お気に入りのマグカップを持ち歩くような感覚で
─お客さまの手元に届いてから、印象的だった感想はありますか?
東原:口当たりがいい、音が鳴らないなど、自分たちが工夫を凝らした点を褒めてもらえるのはうれしいですね。“このマグボトルの心地よさを知ったら、これまで使っていた水筒には戻れません”、“こういうものを求めていた”といった声をいただいたときは感激しました。
─マグボトルでも“おいしさ”をあきらめなくていいんだという発見がありました。おふたりは普段、どんな暮らしのシーンで使っていますか?
岩崎:個人的には飲み口が広いのが気に入っていて、自宅で珈琲や紅茶など香りが立つものを入れてマグカップの代わりに使っています。自然な動作で首を無理に傾けなくても、最後の一口までおいしく味わえるので。朝、珈琲を入れて通勤中や職場で飲むこともあります。
東原:私は家でクラフトビールを注いで飲んでいます(笑)炭酸だとフタができないので、グラスとして使う楽しみ方になりますが。 金属のタンブラーで飲んだときに違和感があって、試しに350mLのEverywhereマグに注いでみたら、おいしかったんです。香りが立つし、冷たさもキープされますし。200mLでホットワインを味わうのもいいかもしれません。
─携帯するマグボトルの枠を超えて、おいしさを五感で楽しむマグカップのような使い方ができる。お話を聞いて、その理由がわかりました。
東原:暮らしの中で、いつどこでも、飲みものをおいしく五感で味わっていただくことを軸に、2年半かけて開発しました。ぜひお気に入りの飲みものを注いで、マグカップを持ち歩く感覚でご愛用いただけたらうれしいです。その先に、ほっと一息やさしい時間が生まれることを願っています。
写真:土田 凌
文:徳 瑠里香