よみもの

vol.9/有賀薫さん(スープ作家)

第9回はスープ作家の有賀薫さんが登場。ままならない日々を救うスープ料理、モノ選びの視点、そして愛用しているマーナ商品について伺いました。
 

しんどい日々が安らぎに変わるスープ

くつくつ煮込む音に、漂ういい香り。ふたを取った瞬間の湯気、ひとさじごとにゆるむ頬。家庭料理のあたたかさをレシピと共に届けているのが、スープ作家の有賀薫さんです。

たとえば疲れ果てた平日の夜。さあどうしよう、作る気力なんてない…そんな日も有賀さんのレシピがあれば大丈夫。家にあるものでちゃちゃっと作れて、体はあたたまり「やった、ちゃんと作れた」と自己肯定まで叶います。

「スープは心に作用する料理ですから」

おだやかに口を開く有賀さんはレシピ開発、著書出版、コラム執筆にスープ旅。活躍の幅をのびやかに広げています。

スープ作家としてのデビューは意外にも50代に入ってから。20年以上、生活者として料理を作り続けてきたから、レシピはなるべくシンプルに。そして消耗ではなく、心身ともに満ちていくものを。

「料理が億劫に感じる気持ち、本当によくわかるんです。私自身、ライター業と育児を両立しながら、ごはんを作ってきました。『今日の夕飯、何にしよう』なんて日も多々あって、料理のしんどさは自分ごと。とはいえコンビニ弁当で済ませるのも味気ない」


(パパっと完成「鶏ときのこのスープ」)

「その点、スープは簡単で失敗の少ない料理ですから、忙しくても作れます。冷蔵庫のすみに転がっている野菜の切れはしや、うまみが出るハムなんかを鍋に入れて、コトコト煮込んで塩で味つけすれば完成」

私たちは知っている。しんどくても、いざ作ってみると料理は自身を癒やしていくものだということを。ごはんをこしらえ、おいしさを分かち合う。それは人に宿る根源的な喜びかもしれません。

「よく人が遊びに来る実家でした。母が湯豆腐とかを作って、みんなで食卓を囲む。そのあたたかな記憶が原体験にあります。人ってスープという言葉だけでほわ〜っとゆるむんです(笑)。だからスープの力を借りて、くつろぎや安らぎ…食にまつわるあたたかなものを届けたい」
 

フィット感が一番。マーナは“ないと困るもの”

 
有賀さんが日用品を選ぶとき、大事にしている視点。それは体へのフィット感。時にデザイン重視で選ぶこともありますが、合わないと使用頻度が減っていく。自然と手に取ってしまうものを、愛用の軸としています。

「毎日使うものだから、小さなストレスがないだけで生活が楽になる。体や使い心地は人それぞれ。だから合うものを選ぶことが一番。その見極めは、実際に手に取ってたくさん使うことかな。『合う・合わない』って体の感覚だから」

「マーナは使い続けているものが多いです」と有賀さん。はじめは「スープジャーのためのランチスプーン(販売終了)」。そして「おさかなスポンジ」、しらいのりこさん(vol.6)におすすめされた「極しゃもじ」などが日常を支えているそう。

「ものは『使って楽しい』と『ないと困る』の2つに分かれると思っていて、マーナは後者。なんか不便だな〜という煩わしさをデザインで解決してれるから、使うたびにこんなに楽なのかと驚きます。ちょっとしたしんどさを改善してくれることが、日常でどれほどありがたいことか。生活者思いのやさしさが商品から感じられます」

たまたまお店で見かけ、2年前から愛用している商品は「Shupattoミニマルバッグ Drop 12L」。リピート買いすると決めているほど、暮らしに欠かせない存在です。


Shupattoミニマルバッグ Drop 12L
たっぷり入るのに手のひらサイズにまとまる
「一つあると安心です」

「身軽に出かける時、かばんやポケットにShupattoを忍ばせています。出先で手土産をいただいたり、八百屋に寄って帰ろうなんて日も袋をもらわずに済みます。エコバッグってうまくたためずぐちゃっとなるのがストレスでしたが、きれいにたためるのも◎」

取材にあたり、個人的に気になるものを試した中で「今後も使い続けたい」と太鼓判を押してくれたのは「バケツ(5L)」。ふきんの浸け置きにぴったりでした。


バケツ(5L)

「清潔なふきんって心地よいですよね。そのためのルーティンがあって。使い終えたふきんをバケツにぽんぽん入れて、ある程度溜まったら、漂白して一晩浸け置き。翌朝すすいで、洗濯機で脱水して干すと、白を保てます」

「今まで適当なタッパーで代用してましたが、どうも見た目が良くないともやもや。マーナのバケツはシンプルな佇まいで、持ち運びもしやすい。スクエア型で洗い場にもフィット。出会えて良かったと思っています」

日常にひそむしんどさにふたをせず「じゃあどうすれば心地よい?」と今に目を向け、自らの歩幅で整えていけたら。ままならぬ日常はあたたかなもので満ちていく。一杯のスープ、身近な日用品から変えていけばいい、と励まされました。

Q&A
【Q1】長く愛用しているマーナ商品は?
「おさかなスポンジ」です。しっぽのくびれに指がフィットし、持ちやすく洗いやすい。使うたびに「おさかなである理由がちゃんとある」と感じ入ります。
 
【Q2】マーナの「お玉」の使い心地は?
コンパクトな「お玉 S」が特に使いやすかったです。今まで何十種類と試してきましたが、小さいお玉は案外使い勝手がいい。汁椀に注ぐときにこぼれにくく、はまぐり型でつーっとピンポイントで注げるのも◎。
 
【Q3】有賀さん家の定番スープは?
豆腐のお味噌汁です。少し緊張する朝は、豆腐のお味噌汁と決めていて。いつもと違う朝にいつもと同じものを出すことで、フラットな自分に戻れるように。スープは日常に寄り添ってくれますね。

Profile
有賀薫さん
スープ作家。約10年間、毎朝作り続けたスープを土台にシンプルでおいしいレシピや家庭料理の豊かさを伝えている。『スープ・レッスン1,2』『ライフ・スープ』など著書多数。
Instagram:@arigakaoru

写真と文:七緒