マーナの定番品として、新たに加わったランドリーバスケット。「ランドリーの定番を作りたい」。奇をてらわずシンプルで、美しい佇まいのものを。使っていないときもきれいであることを重視した、“マーナらしい”ランドリーバスケットができました。
【ランドリーバスケット プロダクト担当】牧谷
▼目次
1. どの家庭にもある。だからこそ“定番”を
2. ミリ単位で追求した“ちょうどよさ”
3. 小さな違和感を、こだわりで解消
4. 細部に宿る、“きれいな佇まい”の哲学
どの家庭にもある。だからこそ“定番”を
(スリムだけどたくさん入る「ランドリーバスケット」)
―ランドリーバスケットを作ろうと考えたきっかけを教えてください。
マーナは生活に関わるもの全般を作っていますが、実はランドリーまわりにはまだ手をつけられていなかったんです。それなら、まずは“定番”を作りたい、と企画がスタートしました。
リサーチをしていると、ランドリーバスケットは「どの家庭にも1つ、多くて3つはある」という事実が見えてきて。まさにランドリーの“顔”ともいえる存在。だからこそ、奇をてらったものではなく、あくまでシンプルで使いやすいものを目指しました。
―どんなことから始めましたか?
まずは社内でヒアリングすることから始めました。すると、生活環境や家族の人数によって求めることが本当にバラバラで。1つで十分という人もいれば、汚れ物と白物などを分類したいから4つ欲しいという人もいたり、使わないときは折り畳んでしまいたいという人もいたりと、三者三様でした。
―正解がいくつもあるんですね。
そうなんです。だったら人によって使い方を限定しないものにしようと、誰もが使いやすく、どこに置いてあっても生活感が出にくいデザインを優先しました。
そして、今あるバスケットに対する小さな不満、たとえば「持ち手が痛い」「洗濯物が透けて見える」「プラスチックが割れやすい」なども拾い上げて、丁寧にひとつずつ改善していきました。
ミリ単位で追求した“ちょうどよさ”
(右から歴代のサンプルたち。一番左が完成品)
─思っていた以上に見た目よりもたっぷり入るのが意外でした。
よく言われます(笑)。実は、ものすごくせめぎ合った部分なんです。「幅はスリムにしたい」「でも35L以上の容量は欲しい」「佇まいは美しく保ちたい」という、相反する要素のちょうどいいバランスを探るのが難しくて。
容量だけを優先すれば、四角が一番効率的なんです。でも四角いとどうしても無骨な印象になってしまう。暮らしに馴染むやさしい印象にしたかったので、オーバル型の曲線の微調整を繰り返しました。
高さと幅、容量、曲線をミリ単位で追求した結果「見た目はスリムなのにしっかり入る」という、“ちょうどよさ”に着地できたと思います。
(縦長のスリットにすることで目隠し効果がアップ)
―もうひとつ特徴的なのが、この縦スリットのデザインですね。
通気性と目隠しを両立させるために、あえて格子状ではなく縦スリットにしました。風を通して蒸れにくくほこりが溜まりにくい、けれど中は見えにくい、という構造です。
―機能性と見た目の美しさを兼ね備えていますね。
見た目はシンプルなスリットですが、少し厚みを持たせることで、斜めから見ても中が見えにくくなりました。あと一歩のところで行き詰まっていたところ、偶然見つけた住宅の縦格子の構造にヒントを得て、「これだ!」と思い幅を調整。結果的に通気性と目隠しのバランスがちょうどよくなりました。
(カラフルなクッションを入れても目立ちにくい)
―これならリビングにも馴染んでくれそうですね。
せっかくなら、クッションを入れたり、おもちゃを収納したりとランドリー以外でも使ってもらいたくて。リビングにあっても自然な佇まいになるように意識しました。
ラタン調のカゴのような優しくて温かみのある雰囲気にしたくて、できるだけ直線が少ないデザインにしています。例えばフチは気づかれないほどの緩やかな曲線にしていますが、そこが意外と印象を左右しました。
(緩やかにラウンドしたフチで柔らかな印象に)
小さな違和感を、こだわりで解消
―持ち手にもかなりこだわったのだとか。
よくあるバスケットだと、手をかける部分にエッジが立っていて指に当たって痛いことが多いんです。そこを解消するために、持ち手に丸みを持たせて、握りやすく、手が痛くならない構造にしました。
(手に優しい持ち手で、ストレスフリーに)
―言われないと気づかないけど、持ちやすさは大切なポイントですね。
そうなんです。洗濯物がたくさん入ると10kg近くになることもあるので、一瞬とはいえその重さを手にかけたときに“痛くない”というのはとても大事。地味なことだけれど、毎日使うものだからこそこだわりました。
―高さにもこだわったそうですね。
持ち上げたときに膝が当たらない高さも意識しました。ランドリーバスケットは、運びやすさも重要です。階段の昇り降りも想定しました。
また42cmという高さは、一般的なドラム式洗濯機の扉を開けたときでも扉があたりにくいサイズ。洗濯物の出し入れがスムーズになる仕様になっています。
素材も、なめらかで手触りの良い樹脂を選びました。
(素材は粘りのある樹脂に。割れにくく耐久性がある)
細部に宿る、“きれいな佇まい”の哲学
―実際に使ってみた方の声はいかがでしたか?
「前よりいっぱい入って持ちやすい」という声をもらえました。“溜める用”と“取り込む用”で2個使いしている人も。ぴったりスタッキングできるので、意外に場所を取りません。私も2個使い派です。
あと「4人家族だけど、十分な容量です」というユーザーからのコメントもあって。洗濯物が多い子育て世帯にも使っていただけて嬉しいです。
―改めて振り返ると一番のこだわりはどこでしょうか?
シンプルがゆえに、細部までとことんきれいな佇まいを追求した点です。一番はじめのサンプルができてから1年半、見た目では分からない微調整を重ねました。「もうできてるじゃん」と言いたくなるところからが本番というか(笑)。
でも、そのこだわりが最終的な使い心地に直結しているんだなと、今、改めて感じています。スリットの設計から、切り口の処理、持ち手の形まで、すべてが見えないけれど、効いてくる工夫ばかり。形に尽きる製品だと思っています。
文:高野 瞳
写真:井手 勇貴